印刷業界分野でのETA(Enhanced Terminal Accessibility)、AAL(Active Assisted Living)の利用について

今般、諸官庁、行政、企業では、多くの海外からの人々が働き、また、障がい者の雇用も法的に定められております。そして、それらの人々が、社会生活しやすい、働きやすい社会、職場環境とする事が求められております。

また、日本語を母国語としない多くの海外からの観光客も来日し、街中でも目立つようになりました。しかし、街中の機器の利用方法が分かりづらいものもあり、快適に日本の各地で過ごせるような配慮も必要と成ってきました。

従って、職場の事務機器の利用や街中のATMや交通機関の機器等に於いて、誤操作なく容易に、また安全に利用できるようにすることも快適に良い印象で日本で過ごせるための大切な環境整備だと思います。

1.ETAでの職場・学校等の環境での改善

ETAでは、利用者が一般的な操作方法では、利用が困難か利用できない場合に、機器に対する「支援リクエスト情報」によって、その機器の操作方法を改善をするものです。

そこで、職場の事務機器の応用の一つのETA利用の例としては、社員証カードのIDと支援リクエスト情報を結び付けて、コピー機などを利用する時に母国語表示や母国語の音声ガイダンスが出来るようにすることが考えられます。以前、お聞きしたところによると、コピー機では、輸出用に多国語(7から9ヵ国語)対応がプログラムされて居るとのことなので、この機能を生かしてETAの仕組みを作る可能性を検討することは、働きやすい職場環境にする一つの方法であると考えます。

また現在大学等では学生がコピー機を利用するときには有料であるとお聞きしましたが、やはり、日本語を母国語としない留学生等の在学が増えているとのことなので、社員証の時と同様に学生証と支援リクエスト情報にその人の理解できる言語とを結び付けて、スムーズに利用することが出来る環境を提供することが可能となります。

また、支援リクエスト情報では、視覚障害のある方には、文字を大きくする、白黒反転文字にする、表示に変えて音声で案内し、押しボタンスイッチの上の凹凸記号を一緒に利用する事で、スムーズな操作を覚えることが可能となる事が期待されます。

尚、当協議会では、タッチパネルが視覚障がい者利用できない問題について、当事者とメーカ、大学研究室などと共に対応を考える委員会を作る準備を進めています。当事者のご意見では、タッチパネルの利用を反対するという事ではなく、やはりどうにかして、共に利用できるアイディアを考えて欲しいという事でした。

聴覚障害では、全てのガイダンスを表示することや、利用者に聴き易い周波数領域、話者のスピード等の支援が考えられます。

車椅子利用者からよく言われることは、表示に天井の蛍光灯や明るい窓が映り込み見えづらいという事で、可能ならば表示器の角度が変えることや表示部、操作部の高さが変えられると良いのですが、もっと経済的で良い方法、例えばスマホアプリで機器の操作が可能になるとかが有りますので、この方法についても、当事者とメーカ、研究者等と共に考えて行きたいと思います。

2. ETAでのデジタルサイネージの機能UP

駅やイベント会場、公的機関等をはじめ、固定広告からデジタルサイネージの意向は、目を見張るものかが有りますが、何台ものデジタルサイネージが同期して同じ画面を映し出しているものが多いように見受けられます。確かに、コンテンツの製作費用の事も考慮するとこの様な事も仕方が無いのかと思いますが、5Gの時代になると、もっと個々に独自性を持たせたものが面白いかと思います。常識では、「デジタルサイネージは、大勢の人が見るものなので、個別の利用はしてはいけない」と言われることが有ります。

しかし、例えば交通機関の改札やイベントのゲート等を何人か共通言語をもつ海外の方が通られると、その言語情報で、AIが処理して、その人々がデジタルサイネージの前を通る時間を予測して、同じ画面でも、その言語文字で表示することや、非常時などに、そこにいる人々の理解できる言語が絞れて素早く表示することで安全な避難誘導が出来る様な事も考えられます。

エスカレータの小型のデジタル表示は、何らかの方法でその人の言語を読取り、エスカレータのスピードに同期して次々と画面が変わってもストーリー性のある画面を見続けられるような事も面白いかもしれません。他にもサービスタイムにQRコードをデジタルサイネージに出し、それを読取ったらレストランやコーヒーショップで割引とか、おまけがもらえるというようなアイディアも次々と浮かんでくると思います。でも、その時も海外の人にわかるような表示にしなければ公平なサービスとは言えません。常識ばかりでは、新しいものは作れないのです。私がICカードを開発したときもカードの厚さ0.76mmにICチップを埋めることは非常識でした。

3. ETAでの銀行のATM、CDの機能UP

2014年のETA/TIMの実証実験で、ATMにETA機能を付加した技術は出来ておりますが、中々銀行での採用が進んでおりません。当時も今も銀行にとって経営が厳しいことは理解できます。確かに障がい者対応のATMもありますが、今後少子化で、海外からの働き人が増えてくることを考えると何らかの対応が必要です。カードの中に支援リクエスト情報を記録することなく、クラウドに支援リクエスト情報を置き、PAN等の識別子をそれに結びつけるサービスを銀行や企業で共同に利用する事で、メンテナンスも楽になるし、個々の企業の負担も減るので、もう一度、銀行等にそのサービスを提案することも考えられます。また、クラウドへのアップロードには、PCやスマホのアプリを使い、利用したい人がクラウドのデータペースに自分の支援してもらいたいことを入力するという仕組みです。このデータベースの運営という事業もあります。

4. ETAでの交通機関のカードの機能UP

ICカードの次の個人識別の方法として、顔認証や指紋認証等の生体認証が考えられています。しかし、ETAは、個人識別子としての確固たるものがあれば、QRコードでも生体認証でもなんでも利用可能です。

でも、現在、ほぼ日本全国にある交通カード等のFelicaに前述の方法で利用できると、とても簡単にシニアや障がい者、海外からの観光客等に大変利便性の良いカードに生まれ変わります。問題は、そのクラウドの運営者を誰が引き受けるかと言うことです。

最初からETAを利用したいと思う人は中々いないかもしれないので、海外の人に、まず、英語、中国語のアプリを無料で配布して、利用言語だけ入れてもらい利用してもらう事などが考えられます。すでに主要駅では、多国語の券売機が有り、タッチパネル方式で言語を選ぶことが出来ます。従って、言語とIdmを結びつけるだけ、コピー機の時と同じくらいの改造で実現可能かと思います。

5.AALシステムの ETAとの関係とAIロボット

AALは、独居のシニアや病気、けがなどで、一人で家に居る方々の見守りで、日常自立支援と呼ばれていますが、ETA機能を持つ機器がどこにあるかを知らせる機能等、もっと広い支援を行うシステムを考える事が可能です。少子化により、ますます医療、福祉に関われる人員の減少が問題視されますが、その人手での不足を補完するためにIT機器で支援していく事ですが、どうしたら、利用者主体とする暖かく感じられる支援が可能かを考えて行く必要があります。

一つのアイディアとしては、AIロボットとのETA機能で支援されたコミュニケーションを通しての見守りや相談相手となる様な事が考えられています。また、AIロボットは、単独で動作することなく、インターネット上に存在するスーパーバイザーによる支援を受けて、常に正しい相談援助、社会福祉制度、市町村制度情報等を更新して利用者の便宜を図ります。時には、利用者の話し相手になることが有るかもしれません。AIロボットは、そのような話の中でも利用者が本当に必要としている支援を見つけることが出来るかもしれません。AIロボットの事をホテルのコンシェルジェのように、なんでも利用者の必要を聞いてくれるという事で、「ホームコンシェルジェ」と名付けてみました。

当協議会では、様々な分野の方々との意見交流を通して、様々な問題を抱えておられ方々に、もっと住みやすい社会を迎える事が出来るようなことを考えて活動していく所存です。

其の為にも、どうか、御社に置かれましてもご協力頂けると、良い道が開かれるように思いますので、どうぞ、宜しくお願い致します。