より便利でフレンドリーな交通システム事業分野へのご提案

はじめに

「支援とは何か」を考える中で「支援する側が、何時、支援される側になるとも限らないので、自分が支援される立場になって、支援を考える」と言う言葉が心に留まり、人間としては両者対等で有る事を心にしっかりと持って支援いくことをもう一度教えられました。また、社会に於いて、当事者により良いトータルな支援を継続的に行っていくには、様々な分野の人々と協働で支援事業を行う必要を強く思わされました。

ETAは、利用者の要求により機器を利用し易く支援する機能でしたが、AALでは、屋内外に問わず行動や健康状態などを見守りを支援する仕組みですので、BLE(Bluetooth Low Energy )ビーコンでETA機器の近くに来ると、その機器の場所や機能についての説明などが、汎用のスマートフォンによって知ることが可能となります。

また、AALでは、シニアや病気や怪我で利用者自身の住居に一人でいる場合など、安全確認などをIT機器で支援する仕組みですが、それらの機器の操作や医療・福祉・行政機関関係者とのコミュニケーションの支援には、ETAを利用します。

この様に両者の良い事を統合することは、より良い社会のインフラの構築につながることと考えております。

1. 交通機関へのETA・AAL利用のご提案

今迄も、何度かご説明させて頂きましたが、今回、多少改訂・まとめてみました。

Suicaなどの交通カードの普及は目覚ましく、その利用範囲は既に鉄道の駅を出て社会インフラの一つとも数えられるようになりました。

海外において、交通切符の購入は、窓口で購入することから自動発券機で購入することで以前より、だいぶ購入に要することが改善された感もありますが、その国以外の人にとっては、まだ大きなチャレンジとストレスを感じることが有るかと思います。

そこで、この交通カードを利用する時に、シルバー世代、障がい者、海外からの渡航者が切符販売機、精算機等をより使い易い様に、利用者の必要とする「支援リクエスト情報(ETA)」を、利用者の所持する交通カードの識別番号(Idm)と紐付けして支援を行うと、その交通カードをリーダに読ませるだけで、利用者がリクエストした支援を受けることが出来る仕組みとすることが出来ます。

ETAの開発では、ほとんどがソフトウェアで実現できますのでスイッチ/ボリュームツマミなどのハード開発を必要としませんし、将来にわたっての支援リクエスト情報の追加・改善も可能で経済的です。

また、鉄道運営者にとっては、券売機、チャージ機、グリーン券発売機、乗換案内などの利用がスムーズに購入が可能となり、使用方法の説明等の為の人員配置も軽減されます。

ご参考) この支援の方法は、日本から提案し、日本が主体となってまとめた国際規格ISO/IEC 12905 (Enhanced Terminal Accessibility using cardholder preference interface)が基本となっており、その翻訳国内規格であるJIS X 6905 (情報端末の操作性を向上させるカード所持者優先情報)があります。

この規格は、カード関連の規格となっていますが、規格の適用範囲に媒体要件や支援リクエスト情報がどこに記録されるかは、特に指定されておらず、支援リクエスト情報の読出しフォーマットだけが共通利用の最低限の条件として規定されています。

従って、将来カードの様な媒体だけではなく、顔認証の様な個人識別でも利用可能です。

また、支援リクエスト情報は、障害そのものの記述では無く、支援方法のみが規定されることで、プライバシーに配慮しております。更に支援の種類は100以上有しており、国際規定以外のローカルな支援方法も適用可能な仕組みがあります。

この規格のタイトルEnhanced Terminal Accessibilityを省略してETAと呼ぶことにいたします。なお、この日本工業規格JIS X 6905の定期見直しはJICSAPが担当しておりましたが、JSAのご許可を頂いた後に当協議会が引き継ぐ予定となっています。

・ご提案としては、ETA機能の仕組みで、まず、多言語化を実施し、その後、ETA機能の仕組みを用いて、少しずつ当局や関連団体とも話し合いながら、支援機能を追加していければ良いのではないか、と考えております

1.1 交通カードシステムの多言語情報で、多くのアプリケーション利用者にメリット

海外の方が母国語で機器の操作が可能になり、駅の情報表示機器等を多言語化することで、海外からの人にも安全誘導が出来、楽しい旅行を提供することが出来ます。

一方、駅中の店舗にもETA情報を開放することにより、店の広告看板や食事のメニューに多言語表示を可能とすることで、利用者の利便性に貢献するばかりか、店舗を運営する人の海外の人とのコミュニケーションの負担も減じて集客が可能となります。更に街中の観光案内表示、お土産店等のコミュニケーション等にも利用出来、その他、駐車場の発券・支払機、タクシーのナビ・料金支払システム、キオスク端末等、いくらでも応用が考えられます。

1.2 ETAの多言語機能とIdmの紐付け方法

・スマホ・PC等のJREのアプリのホルダーに多言語選択アプリを追加して、利用言語を設定後、リーダが読み取ったカードのIdmと自動的に紐付けし、ネットワークに保持する。(交通カードでも交通カードアプリのあるスマホでも同じ方法)

・発券機、チャージ機などに、上記と同様なIdmと利用言語の紐付けアプリを追加する。

普及方法の一つとしては、海外の人に、まず、英語、中国語のアプリを無料で配布して、利用言語だけ入れてもらい利用してもらう事などが考えられます。すでに主要駅では、多国語の券売機が有り、タッチパネル方式で言語を選ぶことが出来ます。従って、言語とIdmを結びつける改造で、多言語化の実現が可能かと思います。

2. ETA・AALのアプリケーション例

2.1 デジタルサイネージ

駅やイベント会場、公的機関等をはじめ、固定広告からデジタルサイネージの意向は、目を見張るものかが有りますが、何台ものデジタルサイネージが同期して同じ画面を映し出しているものが多いように見受けられます。  確かに、コンテンツの製作費用の事も考慮するとこの様な事も仕方が無いのかと思いますが、5Gの時代になると、もっと個々に独自性を持たせたものが面白いかと思います。常識では、「デジタルサイネージは、大勢の人が見るものなので、個別の利用はしてはいけない」と言われることが有ります。

しかし、例えば交通機関の改札やイベントのゲート等からの言語情報があると、そのうちの何人かが共通言語をもつ方々が通られるとAIが判断し、その人々がデジタルサイネージの前を通る時間を予測して、同じ画面でも、その言語文字で表示することや、非常時などに、そこにいる人々の理解できる言語が絞れて素早く表示することで安全な避難誘導が出来る様な事も考えられます。同じことをBLE等のビーコンをトリガとすることも考えられます。

エスカレータ用の小型のデジタル表示は、何らかの方法でその人の言語を読取り、エスカレータのスピードに同期して次々と画面が変わってもストーリー性のある画面を見続けられるような事も面白いかもしれません。他にも、お客が少ない時にサービスタイムにQRコードをデジタルサイネージに表示し、それを読取ったらレストランやコーヒーショップで割引とか、おまけがもらえるというようなアイディアも次々と浮かんでくると思います。でも、その時も海外の人にわかるような表示にしなければ公平なサービスとは言えません。常識ばかりでは、新しいものは作れないのです。私がICカードを開発したときもカードの厚さ0.76mmにICチップを埋めることは非常識でした。デジタルサイネージ機能の可能性を更に有効に利用する事業を展開す事も可能かと思います。

2.2 駅のATM、CD

2014年のETA/TIMの実証実験で、ATMにETA機能を付加した技術は完成しておりますが、中々銀行での採用が進んでおりません。当時も今も銀行にとって経営が厳しいことは理解できます。また、確かに障がい者対応のATMもありますが、今後少子化で、海外からの働き人が増えてくることを考えると銀行キャッシュカード等にも何らかの対応が必要です。カードの中に支援リクエスト情報を記録することなく、クラウドに支援リクエスト情報を置き、PAN等の識別子をそれに結びつけるサービス(磁気カードでも可)を銀行や企業で共同に利用する事で、メンテナンスも楽になるし、個々の銀行や企業の負担も減るので、もう一度、銀行等にそのサービスを提案することも考えられます。また、クラウドへのアップロードには、PCやスマホのアプリを使い、利用したい人がクラウドのデータペースに自分の支援してもらいたいことを入力するという仕組みです。このデータベースの運営という事業もあります。また、BLEビーコンによって、視覚障がい者にATM.CDの位置をその言語で教える事も可能となります。

2.3 AIロボット

駅などに今後は、人手をカバーするために様々な案内やサービスを提供するAIロボットが出現するかと思います。今のロボットでは、センサー等で相手を認識しながらの試行錯誤で、なんだかコミュニケーションがうまく行かない事が見受けられます。そこでETA機能で支援されたコミュニケーションを通してのご案内、ご相談相手となる様な事の方が良いかとおもいます。また、AIロボットは、単独で動作することなく、インターネット上に存在するスーパーバイザーによる支援を受けて、常に正しいご案内情報等を更新して利用者の便宜を図ります。「ステーションコンシェルジェ」と名付けてみました。「ステーションコンシェルジェ」の居る位置もBLEビーコンでわかるようにします。これらのAIロボットにサービスコンテンツを誤りなく、提供する為のスーパーバイザー運営事業も考えられます。

2.4 飲料水の自動販売機

液晶ディスプレイ表示付自動販売機の表示部機能の多言語化は、デジタルサイネージの機能と似ておりますので、同じような手法で可能であり、BLEビーコンで、その位置を教えることも可能です。

また、車椅子利用者用に、操作し易い自販機も開発されていますが、操作パネルなどのハードの改造が必要となり、コストとの兼ね合いで普及には時間がかかるようです。そこで、アプリの開発は必要ですが、スマホやタブレットにその言語で自販機の操作パネルが表示され、利用する事を考えてみる事も良いかもしれません。この応用は、自販機に関わらず、ATM,発券機等、様々な装置に応用できるかと思います。ただし、商品の取り出し口の位置は、車椅子の人にも取り出しやすいことの配慮が必要です。

3. 今後の課題について

3.1 タッチパネル機器の利用について

当協議会では、タッチパネルが視覚障がい者利用できない問題について、当事者とメーカ、大学研究室などと共に対応を考える委員会を作る準備を進めています。当事者のご意見では、タッチパネルの使用に反対するという事ではなく、どうにかして、共に利用できるアイディアを考えて欲しいという事ですので、経済的で可能な方法を検討していきたいと思います。

当ETA・AAL推進協議会では、様々な分野の方々との意見交流を通して、多様な問題を抱えておられ方々に、もっと住みやすい社会を迎える事が出来るようなことを考えて活動していく所存です。

其の為にも、どうか、御社に置かれましてもご協力頂けると、良い道が開かれるように思いますので、どうぞ、宜しくお願い致します。