設立のごあいさつ
若葉が生き生きとする季節になりました。
私たちもこの若葉からエネルギーを頂いて、この度ETA-WGの発展形である「一般社団法人ETA・AAL推進協議会」を立ち上げました。
法人化の目的は、組織化することによる社会からの信頼性を得る手段でもあります。
法人化することにより、「ETA・AALを必要とする方々の受け皿」となりますが、現段階では、普及促進に向けた広報活動が主であり、収入を得る事業については不透明であります。従って、事業収入の得られる目途がつくまでは、今迄通り、ボランティアの働きとなります。
当法人の役員としては、寄本義一が代表理事、上杉貴が専務理事で事務局となり組織運営を担当し、数名の理事と共に普及・推進活動を進めて行く体制となっております。
下記に設立の経緯を記載いたしましたが、皆様のご協力が必要です。
この様な状況でも同じ思いを持つ者が集まり、シニアや障がい者を含む全ての人が良い人生を送ることができるように、各自の専門性を生かした自由な発想と、多様な意見を言い合えて、楽しく活動が出来る場をご提供致したく考えておりますので、どうぞ宜しくお願いいたします。
立ち上げまでの経緯
シニアや障がい者を含む全ての人が機器を利用し易くするEnhanced Terminal Accessibility(ETA,支援リクエスト情報)の原案は「一般社団法人ビジネス機械・情報システム産業協会(JBMIA)」のETA委員会等で取りまとめられ、ISO/IEC JTC1/SC17/WG4及び同SC17国内委員会を通して国際の場に提案され、ISO/IEC 12905:2011として制定されました。
また、当時の「日本ICカードシステム利用促進協議会(JICSAP)」で翻訳JISの作業を行い、JIS X 6905:2013として発効されました。
その後、JBMIAのカード部会のETA-WGとして活動を続け、2014年、経済産業省主催のIEC東京大会に併行して行った実証実験で、ATM、デジタルサイネージ、レストランの電子化メニュー、自販機のシミュレーション等で、ETAの実用性をアピールいたしました。
ETA-WG終了後は、独立したETA-WGとして、勉強会や関連の諸官庁、機関、企業、大学、障がい者団体などへの訪問・説明等で普及活動を行ってまいりました。
また、この間、行政、諸官庁のプロジェクト提案に数回程申請を試みましたが、活動母体の無いものは、採用されることが有りませんでした。
このようにETAの普及活動の目途も立たず、WG主査の私はすでに退職しており、昨年は事務局の上杉貴も企業からの退職があり、2018年6月に、この活動を停止しなければならない状況が起こりました。
しかし、多くの方々から「この様な仕組みは、今後の社会に必要になるものだ、もう少し世の中の理解を待つことだ」と励まされて、なんとか続けようという気力を頂きました。
その様な中で、2015年に東京で行われた国際電気標準化会議System Committee Active Assisted Living( IEC Syc AAL自立生活支援)の総会で、関係者のご厚意により、ETAをAALで利用したケースという題目で講演のご依頼を頂いたことや、AALにETAを用いたユースケースの提案を依頼された事等を通して、AALについての我々の関心が強まりました。
また、ETA単体の機能では社会のインフラとしての役割が十分発揮できず、もっと広いAALの様なシステムの中での利用が必要であることを考えるようになりました。
そこで、今迄のETAにAALを加えた活動の核を作る必要があるとの話が有志の間でまとまり、今回「一般社団法人ETA・AAL推進協議会」の設立となりました。
今後の活動について
基本的には、初めは従来のWGの様な普及・広報活動が中心となり、勉強会、講演会、関連省庁、機関、企業、大学、障がい者団体などに、この法人の事業内容をご説明させて頂き、事業のご協働等をお願いに上がりたいと考えております。
以上、設立まで時間がかかりましたが、皆様のお知恵とお力を頂いて、誰もが住みやすい社会を創りたいと願って活動していこうと考えております。
どうぞ、宜しくお願いいたします。
令和元年5月24日
代表理事 寄本 義一
別紙1
「一般社団法人ETA・AAL推進協議会」の立ち上げにあたって
はじめに
人は困っているのを見れば、なんとか助けてあげたいという気持ちが起きるものである。
しかし、ある人は、「助けてあげたい気持ちはあるのだけれど」と言いつつ、すぐには助ける行動が出来ない理由として、「どう助ければ良いかが分からない。もしかしたら他の誰かが助けてくれるかもしれない」等と自問自答することがあるかもしれない。
昔から良く「その人の立場に立って、何が良いかを考えなさい」と言われる。しかし、自分自身、家族、親類、友人、知人などへと人間関係が次第に希薄になると、中々その人の立場に立って考えることが難しくなる。
それは、その人の性格、育ってきた文化や生活環境の違いなどの知識が無く、もし本人の意思を聞かないで何かをしようとすると、かえってその人の問題が解決できないばかりか、かえって困惑を引き起こすことがあるかもしれない。
それならば、と勇気をもって、その人に近づいて英語だと”May I help you?”、「何か、おこまりですか」と尋ねれば良いのである。
その人から、その状況で、どんな支援をしてもらいたいのかを聞いて、出来る範囲で援助すれば、その問題が多少でも解決できて、お互いに暖かい気持ちになれると思う。
しかし、これも中々容易な事ではない。それは、誰でもが自身の無力感と言うものを経験的にもっているからかもしれない。せっかく支援したのに、それが徒労に終わったり、その努力が報われない事もある。
社会福祉の学びの中に、相談援助と言う科目があるが、日常・社会生活に問題のある人の相談相手となり、必要な社会資源などを用いて、その問題を解決していく事である。
其の学びの中で、先生から何回も強く忠告されたのは、自己を見つめなおすこと「自己知覚」、すなわち、援助者自身の考え方や価値観が、偏っていることを自覚することである。
この事が分からないと、相手の本当に問題となっていることが理解が出来ず、独りよがりな対応を相手に押し付ける事となり、相手が思った通りの行動をしてくれないと、援助者は気落ちする事や、焦燥感に陥ることになる。
例えば、機器操作の支援に於いても、支援する側は、「この支援があれば、きっと操作が出来るに違いない」と考えがちである。その支援で、利用者がうまく出来ないと、「なぜ、これだけの支援が有っても出来ないのか」と言う、時には憤りさえもってしまう事が有る。これは、現在の成果主義を我々が追究してきた事も一因かもしれない。
支援する側は、支援しなくても出来る側にいる。相手は出来ない側にいると言う決定的に異なる立場にいることを覚え、その利用者の本当に必要な支援を考えて行くことが援助者として求められている。支援する人(主体)は、支援される人(客体)の様な関係ではなく、人間として対等であること、互いに相手を信頼し、可能性を信じて支援して行く事を肝に銘じておきたいと考える。
- ETAとは
ETA(Enhanced Terminal Accessibility) は、まさに前述のそれを簡単に実現する機能である。ETAは支援リクエスト情報ともよばれ、機器を利用する時に当事者の支援して欲しい事を機器に伝えて、機器の操作が使い易い支援(表示文字を見やすくする文字の拡大や白黒文字、聴き易い音声による読み上げ等の支援)を行う仕組みとなっている。 ETAは、分かりにくいので、主にコミュニケーションを支援するという意味で我々として分かり易く、「コミュニケーションエイド(Communication Aid)略してコミュエイド/ CommuAid)」と呼ぶこととする。
2.AALとは
AAL(Active Assisted Living)は、シニア等が自立する日常生活を送ることが困難な状況に陥った場合でも、自宅で望む生活が送れるようにIT機器等で自立を高める支援を行うものである。
介護の必要な独居か日中一人となるシニア等を見守、支援していくことは、今後の人手不足では充分な対応が困難となる事が予想される。そこでシニアの意思を尊重し、健康状態や生活状況などをプライバシーに配慮しながら親和性をもったIT機器で、今まで住んでいた家で、安全・安心に、それまでと同じような暮らしが続けられるように支援するものである。
尚、支援の対象は、シニアだけでなく障がい者、病気や怪我のため自宅で療養が必要な人を含めており、将来的には家族一人一人の健康ケア等もIT機器等でトータルに日常・社会生活を支援して行けるシステムとなることを願っている。
AALは、分かりにくいので、支援の対象者は広いが主にシニアへの支援を考えていることから「シニア自立生活支援」という意味で 我々として分かり易く、「シニアライフエイド(Senior Life Aid)」と呼ぶことにする。
3.ETAとAALの関係
コミュエイドもシニアライフエイドも、これまでの説明だと、何か「人と機器間だけのコミュニケーション」のことのように思われるかもしれないが、それらの機器の背後にいる人々とのコミュニケーションをも支援するツールである。特にシニアライフエイドでは、コミュニケーションを、AI機能を用いた人型ロボットや映像、音声等でコミュエイドの支援を受けながら、様々な機関や人々とのコミュニケーションをとる仕組みを提案している。これにより、シニアライフエイドシステム全体の複雑な機能を統合管理することで、利用者に過度な機器操作等の負担をかけない配慮がなされることになる。
また、このAIロボット等によって利用者は、ホテルのコンシェルジュのように、いつでも何でも相談できることから「ホームコンシェルジュ」と呼ぶこととする。更に、このホームコンシェルジュは単独で機能するのではなく、インターネット上のクラウドにあるスーパーバイザーによって。利用者に関連する最新の法的制度や医療・福祉分野、住んでいる町の日常・社会生活に関する必要な情報等がいつも与えられることで安全、安心で、その人らしい暮らしをサポートする事を目指している。
おわりに
利用者個々の性格、育ってきた環境、文化等に配慮し、また利用者の意思を尊重した支援を行う事を忘れずに、シニアや障がい者を含む全ての人が安全・安心な良い人生、日常生活を送って頂けるようにと、私たちは、ここにETA・AAL推進協議会を設立することになった。
そして、多様な利用者のご意見を承り、日々の利用者の状態の変化を確認しながら、それらに合わせたIT技術等を用いて必要な支援を行う事を進めようとしている。
それには、利用者と支援に関係する多職種の人々との連携・協働が必要であり、共に智恵と力と心とを合わせて、これらのIT機器の効果を常に確かめながら、全ての人に明るい暮らしやすい社会の創成に微力ながら貢献して行く事が、この法人設立の願いと目標である。
また、この事業を行っていく上で、利用している全てのIT機器の機能が正常かどうかの確認とメンテナンス、災害時等の停電・瞬電時の対策が考慮されているか等のリスク管理は、大変重要な問題と捉え、関係者に提言を行っていきたい。
大変大きな目標ではあるが、出来るところから一歩、一歩、歩みを進めて行きたいと考えている。
令和元年5月24日
一般社団法人ETA・AAL推進協議会 代表理事 寄本 義一